007 何もしてないのに折れた!



 ちゃ〜坊が、折れたロッドを持ってやってきた。

ちゃ〜坊
「みなとじい〜〜〜!」

みなとじい
「どうした?」

ちゃ〜坊
「折れた〜〜〜!」

 ちゃ〜坊の手には、途中から折れたロッド。

みなとじい
「見れば分かる」

ちゃ〜坊
「何もしてないのに!」

みなとじい
「何も?」

ちゃ〜坊
「うん!」

みなとじい
「本当に?」

ちゃ〜坊
「…………たぶん」

みなとじい
「もう怪しいじゃないか」

みなとじい
「折れたとき、何してた?」

ちゃ〜坊
「普通に釣ってた」

みなとじい
「ぶつけた?」

ちゃ〜坊
「ぶつけてない」

みなとじい
「踏んだ?」

ちゃ〜坊
「踏んでない!」

みなとじい
「転んだ?」

ちゃ〜坊
「転んでない!」

みなとじい
「じゃあ、その前は?」

ちゃ〜坊
「その前?」

 ちゃ〜坊が考える。

ちゃ〜坊
「…………」

みなとじい
「…………」

ちゃ〜坊
「ちょっと倒した」

みなとじい
「ほう」

ちゃ〜坊
「でも、そのときは折れなかったよ!」

 ロッドは、倒したから必ずその場で折れるわけではない。

 どこかへぶつけた。

 地面に置いた。

 何かに挟んだ。

 ほんの小さな傷ができた。

 そのときは何ともなくても、あとから大きな力が加わったとき、その傷が弱点になることがある。

ちゃ〜坊
「じゃあ、折れたときが原因とは限らないの?」

みなとじい
「そういうこともある」

ちゃ〜坊
「…………」

みなとじい
「何か思い出したか?」

ちゃ〜坊
「もう一回……倒したかも」

みなとじい
「増えたな」

ちゃ〜坊
「二回くらいなら大丈夫かな〜って(^^;」

みなとじい
「誰が決めた?」

 釣り竿は魚と引っ張り合う道具だから、とても丈夫そうに見える。

 大きく曲がっても折れない。

 強い魚を相手にしても耐えている。

 だから、少しくらい雑に扱っても平気な気がしてしまう。

ちゃ〜坊
「だって魚が引っ張っても大丈夫なんでしょ?」

みなとじい
「魚に引っ張られるのと、硬いところへぶつけるのは同じか?」

ちゃ〜坊
「…………違う?」

みなとじい
「考えてみろ」

 ロッドが曲がる。

 全体で力を受け止める。

 でも硬いものへぶつければ、狭いところに衝撃が集中する。

ちゃ〜坊
「あ……」

みなとじい
「強いものでも、何に対して強いのかは考えないとな」

ちゃ〜坊
「“強い”にも種類があるんだ」

 みなとじいが、今度はガイドを指さした。

みなとじい
「ここも同じだぞ」

ちゃ〜坊
「005の輪っか!」

みなとじい
「ガイドって覚えろよ」

ちゃ〜坊
「覚えてるって!(^^;」

 ガイドの中を、ラインが通る。

 もしラインが触れるところに傷ができていたら?

みなとじい
「魚が掛かって、ラインに力が加わったらどうなる?」

ちゃ〜坊
「傷のところにラインがこすれる……」

みなとじい
「それで?」

ちゃ〜坊
「切れるかも!」

みなとじい
「そういうこと」

ちゃ〜坊
「小さい傷なのに?」

みなとじい
「小さいから見落とすんだよ」

 ロッドを大切に扱う。

 それは単に「高い道具だから傷つけない」という話ではない。

 小さな傷が、あとになって大きなトラブルにつながることがあるからだ。

ちゃ〜坊
「じゃあ、釣り場でロッドを置きたいときは?」

みなとじい
「どこへ置いたら傷つきにくい?」

ちゃ〜坊
「また自分で考えるの?」

みなとじい
「その釣り場、俺には見えないからな」

ちゃ〜坊
「あ……そっか」

 砂浜なのか。

 堤防なのか。

 岩場なのか。

 置くのか、立てかけるのか。

 その場所によって安全な扱い方も変わる。

 大切なのは、

「ここなら大丈夫かな?」

 と、一度考えること。

 そして海で使ったロッドには、海水や塩分が残る。

ちゃ〜坊
「家に帰ったら、そのままじゃダメ?」

みなとじい
「どう思う?」

ちゃ〜坊
「う〜〜ん……」

 ちゃ〜坊がロッドを見る。

ちゃ〜坊
「海水が付いてる」

みなとじい
「うん」

ちゃ〜坊
「塩も残る」

みなとじい
「うん」

ちゃ〜坊
「……拭いたほうがいい?」

みなとじい
「そう思ったなら、やってみればいい」

ちゃ〜坊
「最近、答えを言ってくれなくなったよね」

みなとじい
「自分で答えてるからな」

ちゃ〜坊
「…………」

 ちゃ〜坊がちょっと嬉しそうな顔をした。

 釣りが終わったら、ロッドを見る。

 汚れていないか。

 傷はないか。

 ガイドに異常はないか。

 つないで使うロッドなら、緩みや不具合はなかったか。

 難しいことをする必要はない。

 普段から少し気にしているだけで、気づけることはたくさんある。

ちゃ〜坊
「分かった!」

みなとじい
「何が?」

ちゃ〜坊
「ロッドは大切に扱う!」

みなとじい
「そうだな」

ちゃ〜坊
「使ったら、ちゃんと見る!」

みなとじい
「うん」

ちゃ〜坊
「倒さない!」

みなとじい
「うんうん」

ちゃ〜坊
「地面に投げない!」

みなとじい
「最初からやるな」

ちゃ〜坊
「よし!」

 ちゃ〜坊が折れたロッドを大事そうに抱えた。

みなとじい
「それ、どうするんだ?」

ちゃ〜坊
「もう傷つかないように、大切に持って帰る!」

みなとじい
「もう折れてるぞ」

ちゃ〜坊
「練習!(^^)」




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